今回取り上げるのは月島蛍(つきしまけい)、ツッキー!と、すこしだけツッキーと山口くんとの友情に触れます。
このページの画像はコミックのデジタル版を使用しており、各画像に出典の巻数を記載しております。
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ツッキーは基本、こんなイメージです。
ポジションは日向と同じミッドブロッカー(MB)。ですが、よく言ってもバレー馬鹿でガムシャラな日向とは対照的な性格。
冷静で無駄な動きをしない。
いつも一緒にいるのは素直でちょっと弱気な山口。この山口からは、ツッキーへのあこがれや大好きがあふれていますが、一方のツッキーは山口を親友だと思っている? わかりにくいですね。
友情だけでなく、感情を表に出す性格ではないので、だからこそ極たまに、ツッキーが感情を見せると、それはよほどのことであり、周囲は感動してしまうんです、よね。でもそれは夏合宿のずっとあと。
同期4人のなかで、一番の高身長、一番の頭脳の持ち主。なのに登場時から夏合宿までは殻のなかでこじらせています。
卵の殻で思考をぐだぐだとこじらせていたツッキーが「やっかいな雛鳥」となって一歩外に踏み出したのは夏合宿。アニメシーズン2の9~11話。
初見はアニメ。山口くんの激情や両キャプテンとのやりとりは感動しました。ぞくぞくしました。ですが好きで何度も繰り返し観るうちに「あれ?」違和感が大きくなって…、なにか引っかかる。そんなときは原作漫画をじっくり振り返るのが一番です。※
※アニメを何度も観るのは特殊、かもしれませんが、昔から本も漫画も繰り返し堪能するタチです。
正直なところ、わたしの映像の読み取り能力がポンコツなので、アニメよりも漫画、漫画よりも小説のほうが理解しやすいのです。というわけで、アニメでモヤモヤしたときは原作漫画(や小説)を頼ります。
そしてやはり!漫画を読んだら胸のつかえがなんだったかわかったし、それも氷解してすっと胸に落ちました。
夏合宿は漫画で10~11巻で描かれています。
アニメにはアニメのいいところがいっぱいあるのは前提として、
やはりアニメ化で文字情報の一部は省略されたり変更されたりします。今回もそういう変更部分確認して、わたしには不足していた情報が補完されました。その結果、わたしのなかではツッキーの輪郭がよりクールになってうれしい限りです。
この記事では、ツッキーが卵の殻をつついて外に一歩でるまで、猫又監督のいわゆる厄介な雛鳥が誕生するまでに注目して漫画「ハイキュー!!」を読み返し、じっくりと理解していきます。ですので、わたしと同じように、アニメで夏合宿のツッキー(&山口)に感動しながらも、なにか小さなモヤモヤが残っているんだよなぁというかたには、この記事が参考になると思います。ま、結局、漫画も読みたくなるんでしょうけど…♪
そして記事の最後に、ツッキーの成長に関連して少しだけアニメ未放送分に触れます。おそらく2024年2月公開予定の映画で描かれると思います。ネタバレが嫌なひとはご注意くださいませ。
月島蛍、ツッキーについて軽くおさらい
ツッキーのポジションはミドルブロッカー(MB)。特にブロックの柱として期待されています。
アニメで放送済みのシーズン4までの情報でいえば、
シーズン3の白鳥沢戦で大活躍し、その後の県内疑似ユース合宿に選抜される。
シーズン4,春高の本戦でも頼りになるブロッカー!
稲荷崎高校との試合中に日向も「本当にブロックうまいんだなぁ」と感動していました。
でもそれは、殻を破ったあとのこと。登場から夏合宿までは違っていましたね。
- 頭がよくて、身長も190cm以上(登場時は未満)。
- バレーのセンスもある。by 山口
- なんでも「シュッ」とか「シャッ」てかっこよくこなす。by 日向
- なんかもったいない190cm。 by 田中
- 最初の3×3のときから心配はしてないけど、やめるって言ったら全力で止める。by 大地
- 合格点はとってるけど100点を目指さないタイプ。by 鳥飼コーチ
- 賢く、かつ冷静。――(でも)弱弱しいんだよな。骨とか折れそうで心配になる。by 木兎
- 身長も頭脳も持ち合わせてる(だから、日向をかなわない存在だと思っているなんて思えない)by 黒尾
実力や才能は間違いなさそう。ですが、その伸びしろへと一歩踏み出そうとしないツッキーを歯痒く感じているようです。
ツッキー自身は、登場直後からむやみに熱い日向や影山に苛立ちを感じていましたし、夏合宿前、烏野の部活メンバー全員のみなぎるやる気に…辟易といった感じに見えます。
どうしてみんな、そんなに必死にやるんだ!?
たかが部活だろ!
ツッキーはあえて殻を破らないと決めていた?
殻(=自分で決めた限界)を作った理由
殻を作った理由は、お兄ちゃんの明光(あきてる)くんへの思い。
中学生明光くんのバレーの活躍を頬を紅潮させて観戦していたツッキー。ツッキーにとってヒーローだった兄、明光くん。
周囲も明光くんを絶賛! ツッキーは誇らしさでいっぱいです。
明光くんは、男子バレーボールが一番強かったころの烏野高校に進学。1年生レギュラーを目指して毎日、前向きに、元気に練習に明け暮れていました。
でも第88話「幻覚ヒーロー」。3年生の最後の試合でベンチにも入っていなかった。
アニメではこの時ツッキーが何に対して「カッコ悪い」と言っているのか説明はありません。
アニメだと、「カッコ悪い」は明光くんのことのように見えた
漫画でもツッキーが目にしたお兄さんの姿は、状況的に他人から見た「カッコ悪い」に当てはまります。
一生懸命頑張ってもレギュラーになれなかった→そんな兄の姿はカッコ悪い。
矛盾はないので、そういう意味が含まれていると感じるのは自然です。
もちろんツッキーの回想や思考から、明光くんのことだけじゃないだろうと想像はできます。
- 自分が兄の実情を知ったことで、兄が傷ついたこと
- 兄はレギュラーになれなかったことで、ずっと苦しんでいたであろうこと
- 中学でエースだった兄が努力すれば高校でも活躍するはず、これはツッキーの思い込みだったこと
- 自分の思い込みが兄に嘘をつかせたこと
- 兄はそれで一層傷ついたであろうこと
- 自分の思い込みが兄に嘘をつかせたこと
兄を傷つけた自分はカッコ悪い。
ツッキーの心のなかでこの比重が大きくなっていくのは感じますが、やはりアニメでは明光くんをカッコ悪いと思ったのだろうという要素は消えないまま…です。
漫画では「明光君に言ったんじゃない」と山口くんが断言→認識が上書きされる♪
この山口くんの断言してくれて、認識が上書きされました。ツッキーをよく知る山口くんが否定しているんです。
「明光くんに言ったんじゃない」んです。
ツッキー、邪推してごめんよ
ツッキーが、ぐだぐだ考えていたこと
- 当時、あの瞬間は
- 部活を兄のすべてであるかのように思っていた自分←カッコ悪い
- 兄に嘘をつかせた自分←カッコ悪い
- その後、思考はこじれて
- 兄を追いつめた自分を否定。
- 部活で上を目指し頑張ることを自体を否定
- 必死になるほどのことじゃない
- たかが部活
- なんでみんな必死にやるんだ
- 部活で上を目指し頑張ることを自体を否定
- 兄を追いつめた自分を否定。
幻の兄にあこがれていた自分をカッコ悪いとしつつ、兄が努力しても目指すものが得られなかったことに対しては、兄をかばう気持ちからか、そもそも価値のないものだったと思いたい?
むしろあのとき明光くんを「嘘つき!」って責めることができていたら、
ツッキーの思いはこじれなかった?
でも、責めるにはツッキーはお兄ちゃんを好きすぎたんだろうか
アニメでツッキーが話をすり替えたと感じたのはここ!「そのあとは?」だった
結論として、実際に話題はすり替えられていたんです。
ここはツッキーが山口くんのセリフの揚げ足を取って屁理屈でかえしていたから、すり替えと感じて正解だったんです。
アニメでは山口くんを見てしまって、彼の姿や言葉に感動してしまっていました。ツッキーは言い訳を探していたので、山口くんの「こっから先は無理って 線引いちゃうんだよ!?」ここに飛びついたんですね。
だから「その後は?」と聞きます。「その先は?」ではなく、その後は?と聞くのはツッキーがこじらせているから。ぐだぐだの屁理屈だからです。と納得できてしまいました。
ツッキーのそんな屁理屈、「なんでそんなに必死にやるんだ?」という質問に、山口くんは心底、真正面から叫びます。
そんなもん、
プライド以外になにが要るんだ!!!
いつもの気弱でおとなしい山口くんとは思えないほどの激情!
ここでツッキーは「まさかこんな日が来るとは」と、山口くんに「お前、カッコいいよ」というのですが、ここでアニメではツッキーの心の声がすこしだけ略されて、方向が変わっているんです。
アニメで略されていた一言、「山口の一言のほうが」ずっとカッコ良かった
僕がぐだぐだと考える事より、山口の一言の方が、ずっとカッコ良かった。
ぐだぐだ思考から抜ける瞬間です。アニメでも漫画でもこのあと、山口くんに「お前、カッコいいよ」と言います。
でも、気づきました?
漫画でツッキーは、自分より山口のほうがカッコいいとは言っていないんです。
「自分が考えていたことより、山口の一言の方がカッコよかった!」です。
ツッキーは自分のことをカッコ悪いと評することはありますが、逆に自分をカッコいいの尺度で言及したことはないんじゃないかな。※ツッキーが自分をカッコ悪いと言いかけた別のシーンについては後ほど紹介しています。
ぐだぐだ考えていたことはカッコ悪かったけど、必死に頑張る理由はまだ見えない
そこでツッキーは、梟谷と音駒両キャプテンが練習している体育館に向かいます。
僕は純粋に疑問なんですが
どうしてそんなに必死にやるんですか?
これ↓はわたしの持論です。とくにフィクションにおいては、
純粋に疑問なんですが、で始まる疑問って、純粋な疑問じゃないですよね。
屁理屈だったり、重箱の隅だったりする。本当に知りたいことや、核心はそこからちょっとずれたところにあって、真正面から聞けないときや、むしろ核心には触れたくないときに「純粋に疑問」って使うよね。
この質問に答えるのは木兎さん。木兎さんらしく疑問の表面的な意味を無視して、その結果、ツッキーが気づかないふりをしている核心へと、ド直球で近づきます。
バレーが楽しければ、必死になるのに理由なんていらない…ケド
でも、へたくそだと楽しくない。
へたくそを脱却するには必死にやるしかない。
いや、だから必死にやる理由を知りたいんですけど…?
え、みんなただ楽しいからやってるっていうの?!
木兎さんは、ツッキーより断然バレーがうまいけれど、楽しいと思えるようになったのは最近といいます。
すり替えられた質問「そのあとは?」の答え、未知のなにか、ハマる瞬間というのがあるらしい
木兎さんがバレーボールが楽しいと思えるようになったのは、苦手なストレートが使い物になってから。そのストレートで以前クロスを徹底的に止められたブロックを打ち抜いた瞬間。
木兎さんが、目の前の敵をぶっ潰すことと、自分の力が120%発揮された快感がすべてと満たされた瞬間。
そういう瞬間に出会ったら、ツッキーがバレーボールにハマる。と断言。
木兎さんは、必死にやっているわけじゃないらしい。
ツッキーが自分がここまでって引いた線の先に、バレーボールにハマる瞬間があるかもしれない。
山口くんにすり替えて問いかけた「その後は?」の答え。
お! すっきりした。
ひっかかりは完全に溶けてなくなりました。
アニメではツッキーがすり替えた質問をして、木兎さんがはぐらかした返事で強引に核心をついた。よくわからないうちに、なんかいい方向に持っていかれた感があったんです。でも、ツッキーが発した質問の答えがありましたね。
こっから先は無理って引いた線を越えた先に、その瞬間があって、バレーボールにハマる(=バレーボールが楽しくなる)
みんなは必死にやっていたわけじゃなくて、バレーボールにハマっていただけ?
ツッキーは「なんでそんなに必死にやるんだ?」って疑問でしたけど、すくなくとも木兎さんの答えによると、バレーボールが楽しいからやっているだけらしい。
ハマるとそうなるのか?
そんな瞬間を持てるのか?
みんなは必死にやってるんじゃなくて、ハマって楽しくて夢中でやっているだけ?
スイッチの切り替えというか、物事を見る角度を変えたというか、思考の方向を変えてみたら、世界は違って見えてくるんだろうなと思う。そして理屈が必要だとすれば、そんな瞬間があるなら経験してみたい!ですよね。
納得できる理由を見つけられればツッキーは頑張れる子なんです。(急に上から目線)
へたくそを脱却! さらにその瞬間を目指してツッキー雛鳥誕生です。
明光くんもその先にいた!
合宿が終わって、久しぶりにお兄ちゃんと話すツッキーは、すこし気まずそうです。でも、明光くんは自分が線を引いて行かなかった先にあるその瞬間を知っていたんですね。
でももう知っちゃったんだ。バレーが”面白い”ってことも スパイク決める気持ちよさも、歓声の誇らしさも
これを聞いたとき、ツッキーは木兎さんの言葉「その瞬間が あるか ないかだ!」を思い出します。
お兄ちゃんはハマったんだった。その瞬間を知ってるんだ。バレーボールは苦行じゃなくて、楽しいんだ、ってことかな。
言葉にすると陳腐ですが、口元で小さく笑むときの気持ちはそんな感じでしょうか。それにしてもこれで笑んでいると感じるって、ツッキーはどれだけ表情に乏しいんだ!ってことです。
どんなに察するのが得意な日本人であっても、この薄い笑みを読み取るのは難易度高いですよね。
ツッキーよりもツッキーのことを知る山口
ツッキーよりツッキーをよく知る山口くんの言葉からツッキーを見てみると。
バレーが嫌いだったら烏野にはこない…
ここまでって自分で引いた線の手前でぐだぐだしているツッキーに、何を言おうか迷ってる、カッコよくなる前の山口くん。前提として「ツッキーはバレーボールをやりたいんだ」ってわかっているんですよね。
ツッキー自身、まだその瞬間は知らないなりに、バレーボールが好きで楽しいんだってことは知っていた。ただ、ぐだぐだの思考のせいで目をそらしてきただけなんです。
だから頑張る理由を見つけてからの成長がすごい。木兎さんは二日前「弱弱しい」と感じたブロックにびびってフェイントに逃げてましたもんね。
ツッキーのその瞬間より、貴重なガッツポーズにみんな驚く
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出典ハイキュー!! 19巻 第163話「月の輪」
春高宮城県予選、決勝、白鳥沢戦での2セット目終盤のこと。
左はツッキーがブロックを決めた瞬間、静止した時間が切り取ったのは山口の背中。山口は試合に臨む前のツッキーの言葉を思い出しました。
そして右はツッキーのガッツポーズと雄たけびを聞いた瞬間です。山口はぐっと胸にくるものを感じてから絶叫しています。(となりの日向も、チームメンバーもみんな似た反応だけど…)
ここでブロックを止めたこと以上に、チームの一員であることに涙している明光くんもいます。明光くんがツッキーを心配する様子などはアニメでは描かれていない部分もあるので、ここもぜひ漫画でも読むことをお勧めします。この163話は19巻の最初にあります。
そんな大活躍のあとでも自分をカッコ悪いと言おうとするツッキーとさえぎる山口
アニメでもここは山口の頼もしさを感じるシーンです。
そしてここは漫画より、アニメのほうがわかりやすいんです。
※自分を「カッコ悪い」と言いたいツッキーとそんなワケないと強気の山口くん
189話、白鳥沢戦に勝ち、ツッキーは鳥飼コーチに「今日のMVPはお前だ」と言われますが…。
試合後、
漫画では
ツッキーは「…止めたのはたった一本だよ。5セットもあったのにね かっ」
山口くん「カッコ悪いワケないじゃん バカなの」とかぶせています。
あれ? ツッキーがなんて言おうとしているのかわかる前に、山口君くんかぶせた! 本当に「カッコ悪い」と言いかけたの!? だったのですが、
大丈夫、アニメS3,E10ではしっかり、言いかけています。
ツッキー「…止めたのはたった一本だよ。5セットもあったのにね 本当、カッコわる」
薄いネタバレを含みます、2月の映画で楽しみにしているツッキーのセリフ
2024年2月公開の映画「ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦」
タイトルからも当然、アニメ第4期の直後、春高の烏野対音駒の試合です。
そして、「もう一回のない試合」というのは研磨と日向の会話からの表現ですし、日向が主役ですし、それでも!
ティーザー動画にツッキーが1ミリもでてないけど、でも、ツッキーのセリフと、山口くんとのあの場面は絶対に観たいのです。
ツッキーが殻をやぶったとき、木兎さんと一緒にいたのは音駒の黒尾さんです。
そしてブロッカーとしてのあれこれを指導したのがこの彼、黒尾さんです。
ここまで成長したツッキーと黒尾さんとのからみがないはずもない。だよね、あるよね。
ツッキーのあのセリフ聞きたい!「おかげさまで、極 たまに楽しいです」とか「僕の先を行く男なんで」とか、
あのシーン映画で観たい!「サーブ&ブロック」のたくましい二人の強烈なHIGH FIVE。
ネタバレといってもこれだけです。薄っぺらで、むしろ期待したかたがいらしたら申し訳ないです。
そして知っているひとにはグッとくる一コマを最後に。
ツッキー、頑張れ!
最後までお読みいただいてありがとうございます。
賢いがゆえにこじれてしまったツッキーが殻を破って雛鳥となり、ぐんぐん成長していく姿はまぶしいです。
劇場版でどこまで描いてくれるか、楽しみなような、怖いような…。